土川歯科医院について

職人仕事

歯科医療に長年にわたって従事してきた時代の流れのなかで、いまの仕事がベルーフ(ドイツ語で「天職」というような意味)だと信じてやってきました。これを一言ではとても言い表せませんが、あえて口にすればこだわりの職人仕事です。
だが、それが自己満足でしかないとするなら、なぜそうなったのでしょうか。それは、現状を打破し、そこを突き破ろうとする努力が欠けてきたからではないかと、今はしみじみ思うところです。
では、どうしたらいいでしょうか。
それは自分の足跡を振り返って、今無くなっていこうとしているものをつぶさに見つめてみることでしょう。
こだわりの職人仕事をもう一度きちんと見直すこと。
そこには、細かいものに真実が宿るところがあります。
そういう意味で、その細かいもの、たとえばその道具や、それを用いた技工について、きちんと見いだして、再評価することです。
それについて、述べてみましょう。
細かい道具の一つですが、歯の切削具があります。
村上のアクメバーですが、これを取り上げてみたいと思います。
歯の根の細い根管を開削していくバーです。
この切れ味は素晴らしいものなのです。
この実例を表す症例を紹介しましょう。
差し歯の根に差し込んだ螺子式ポストが折れた患者さんがやって来ました。
そこで、量販されている根管バーを用いましたが、立て続けに新品が三本折れてしまいました。
そこで困ってしまって考えたところ、フと、このバーにたどり着いたのです。
早速これを用いたところ、さくさくと穴が開いていきました。
折れた金属螺子の周りに、いくつか穴をあけたら、やにわに折れて残った螺子がくるくる回り出して、浮いて出てきたのです。
これを患者さんは感じて、
「いかにもよく切れていった」
ということを感じたとおっしゃいました。
これについては、そのはるかむかし、父が
「日本刀の切れ味だ」
とばかりに実感したままを、とても賞賛するコトバとともに、称揚していたことを想い出しました。
ただ、残念なことに、今ではネットで検索してもヒットしません。
ということは財団法人村上研究所は、もうないかもしれません。
そうだとしたらとても残念です。
どなたかごぞんじではありませんか。
昨今は、地味ではあっても輝いている技術やそのツールが消えていきます。
これは大きな損失だと思うのです。
16Nov08