一本の歯

キリ一歯

患者さんにとって、歯はとても大切なものです。
それにも関わらず、世は無情です。
どんどん歯を喪ってしまうことがあります。
ほとんど総義歯になってしまうのです。
そのようにして、わずかに残った歯を思うとき。
ルサンチマンは極みではないでしょうか。
顎に残した最後の歯には、とても強くその 念いが残ります。
これを喪くすということは、とても大変なのです。

ご夫婦で見える患者さんにこんな例がありました.。
ご主人が何か
「とても大きな変化をこうむった」
と、おっしゃたそうです。
その奥さんは、
「今、(ご主人の、身の上に)何か、大変なことが起きているのでしょうか」
と、お尋ねです。

先日のことでした。
最後に残っていた一本の歯を抜いたのでした。
総義歯の下にあったものです。
それが、
〈いかにも劇的な変化があった〉
そう、捉えたそうです。
「桐一葉、落ちて天下の秋を知る」
などと申します。
とても大きな意識が。そこにあるようなのです。
14Feb06