虫歯と痛み

古代呪術と虫歯

白川静は「文字講話」を語ります。
その第6回で『原始の宗教』について語っていて、
そこでは、霊的な観念が、今日もなお生き続けている、と、白川は説き、
そして、その例として、祟りについて講話するのです。

今回は、もっぱら、祟りについてです。
ここで興味深いのは、虫歯について語り、
それも語源的な内容を、甲骨文のなかから、拾い上げているのです。

歯を疾む、虫歯などになるというのは蠱の災いではないか、というわけですね。歯が虫歯になりますと□1(右上の図を参照してください)歯の間に虫を入れます。虫歯を齲(「ク」と読ませている亅土川註)といいます。ウはわが国の慣用音で、本当はクとよむのですよ。虫歯になって歯が欠けるということは、今は食物がよくなって、殆どの人が虫歯になっているようですが、昔は、虫歯になるということは尋常のことではなかったのです。だから虫歯になるということは、何かたたりのするところであり、虫はたたりのあらわれとされたのでしょう。

少々長くなったのでここで区切ります。
「歯」の字のなかに「虫」を侵入させ、
この字が「齲」だというのです。
虫歯とたたりを、白川はこのように語るのです。
むろん古代の宗教的なメンタリティーです。
それが、「虫歯」という文字に反映されていること、
起源が、とても古いことを伺わせますね。
13Sep20