症例集

喪歯

思わず、眼を、丸く・・して、しまいました。
というのも、こういう、ことなのです。
その患者さんは、そういう切り出しでした。

患者さんがしみじみ語ったことがあります。
長年のお友達と、会食したときのことです。
サンドウィッチを小さく千切って、
そして、お皿の上に並べ出しました。

そうしてちぎり終わると、やっと口のなかへ、…。
そうしないと、食べられないとか。
そうして食べ終わると、ナフキンをお皿の上に覆いました。

確かにパンの耳が苦手な人がいます。
それに何が入っているか、細かくして目で確かめる必要もあったかもしれませんね。
そのお友達も、きっとそうだったのでしょうね。
でも、初めはとても不思議だそうでした。

そういえば、
「抜いた」
「また、抜いた」
と、連発していたことを、その人は想い出したのです。
そうやって、ドンドン歯がなくなってしまった。
そういうことなのでしょう。

口のなかに金属の針金のようなものが走っているのが見えたそうです。
たぶん、金属床かなにかの入れ歯なのでしょうね。
その入れ歯では、そうしないと食べられなかったみたい。
つまり、食べ物を限りなく小さくしないと嚼めない。

何不自由なく食べられる自分は、幸せなんだなと、思ったそうです。
15Dec03